木造住宅の寿命を延ばして住みたい人
よくある質問
「木造住宅が古くなってきました。地震に強く寿命が伸ばせる補強方法が知りたい。」
「木造住宅を安く購入して、新築以上に丈夫にしたい。」
このような疑問にこたえます。
一級建築士で35年仕事をしています。
今回は、『木造住宅 リノベーション30年補強工事』について解説します。
木造住宅 リノベーション30年補強工事
実際にすすめる場合、段階的にすすめることが大切です。
3つの段階があります。
3つの段階
1.木造住宅の現状確認 2.資金計画 3.実際の工事 |
1木造住宅の現状確認
内装の一部を撤去するだけで、比較的簡単に劣化した場所がわかります。
2.資金計画
住宅の寿命を延ばすために、一番大切なポイントは耐震性を高めることです。
つまり、大きな地震への補強が大切です。
3.実際の工事
自分で劣化場所を探し、最小資金で耐震性を高める工事を完了させるプロセスの記事です。
実質的な期待耐用年数を30年延長させ、新築同様の資産価値を獲得するのが目的です。
1.木造住宅の現状確認
1.木造住宅の現状確認
最初に、住宅の現状確認をすることが先決です。
早急に補強しなければならない箇所や、優先順序を事前につかんでおく必要があります。
現状確認時、ケガがないように脚立の準備が必要です。
椅子やテーブルを使わないようにしてください。
最近は、ホームセンターでも安価で手に入ります。
木造住宅の現状確認 6つのポイント
確認すべきポイントは、6つです。
耐震性を確保する上で、必ず見逃してはいけないポイントです。
6つのポイント
1壁の補強・増設バランス補正 2接合部の補強 3基礎の補強 4水平構面の補強 5劣化部材の補修 6住宅の軽量化 |
1壁の補強・増設バランス補正 【6つのポイント】
壁の補強・増設バランス補正が必要です。
木造住宅は壁・柱・はりが一体となって地震に耐えるようになっています。
従って、開口部が多く、壁が少ない面や、筋かいなどが入っていない弱い壁は補強対象です。
内装壁の一部を外して、筋かいが入っているかを確認しましょう。
弱い壁の補強方法
・筋かい新設による補強 ・構造用合板による補強 |
構造用合板は、追加的に張り合わせることで補強できるので、大変有効です。
建物の形が平面的・立面的に整形でない場合、
耐力壁を増やして、建物全体の剛性を高めることが出来ます。
2接合部の補強【6つのポイント】
柱・はり・土台が一体となって地震に耐えるようになっています。
それらの接合部が外れると、軸組が地震の力に耐えることができず、
住宅全体が倒壊・大破することになります。
柱がある部分の内装壁を外して確認します。
具体的な個所は、柱の床側の土台部分とはりとの接合部分です。
一部でも実際に確認できれば、新築当時の施工性能が判断できるものです。
接合部の補強
・土台と柱を専用金物で補強 ・筋かいと柱、土台への端部補強 |
日本古来の木造軸組み工法は、伝統的な「木組み」が発達してきました。
金物が、とても貴重な時代では、金物やくぎを使わない建物が一般的でした。
それらの古建築は、現在も原型のまま残っているほどです。
最近は、多様な専用金物が手に入るようになり、さらに補強しやすくなりました。
3基礎の補強【6つのポイント】
基礎と土台がしっかりしていないと、全体に引き抜かれた状態となり、倒壊してしまいます。
基礎の劣化はひび割れの発生で、確認できます。
外周の基礎部分は、外壁の下周りで確認できます。
少し、大きな住宅では、部屋の区画ごとに基礎があるので、数か所の床板を外して確認しましょう。
和式畳部屋であれば、すぐにでも確認できます。
基礎の補強
・ひび割れ部へのエポキシ樹脂注入 ・鉄筋コンクリート基礎の増し打ち |
既存の基礎が無筋コンクリートの場合は、鉄筋コンクリート基礎を重ね合わせる方法で補強します。
また、基礎部分に厚みが90センチ以下の場合では、
土台部分との接合が不十分なので、この場合も基礎の増し打ちが必要です。
*鉄筋コンクリート基礎の増し打ちが必要な場合だけは、工務店に依頼する必要があります。
錯覚しやすいので、以下図示しました。
4水平構面の補強【6つのポイント】
水平構面は、四角の箱がひし形にひずんでしまうような、力の方向を表しています。
確認場所は、天井屋根の小屋組みと呼ばれる箇所と床板の下地の材料部分です。
水平構面の補強
・床下へは構造用合板の貼り合わせ ・屋根小屋組には専用金物で補強 |
屋根小屋組みの専用金物部分を「火打ち」と呼びます。
工務店や大工さんに依頼する場合は、火打ちばりとして、木製はりで補強します。
自分でやる場合は、必ず金物を使います。
5劣化部材の補修と補強 【6つのポイント】
シロアリの発生被害や雨つゆによる木材の劣化などがあります。
雨といの修理と屋根周りからの雨漏れ修理や外壁面のキレツなどからの浸水です。
シロアリの発生は、思わぬ箇所で発生していることが多いので、
防蟻措置は始めから実施する計画を立てておきましょう。
劣化部材の補修
・防蟻措置と防腐措置 ・床下の土間部分に防湿フイルムを敷く ・雨水浸透箇所へエポキシ、シリコン注入 |
シロアリにより、既に木材が食い荒らされている場合は、
部分的にカットして、交換する必要があります。
この場合、木材の加工は精密さが大切なので、工務店や大工さんに依頼する必要があります。
床下の防湿フィルムは土台や柱下部の防腐に役立ちます。
6住宅の軽量化【6つのポイント】
具体的には、瓦屋根から軽い屋根材への吹き替えです。
耐震上の理想としては、屋根部分や壁面材料は軽量化が好ましいのです。
他の補強がしっかりしていれば、多少後回しでも良いです。
実際に工事をやるとなると、屋根材の交換は自分では困難なので、費用的には高額工事となります。
住宅の軽量化
・屋根材の吹き替え ・外壁材や屋外の地震対策 |
外壁材には最近は軽量合板、コンクリートブロックには軽量パネルなどがあります。
建物本体に直接影響がなければ、後回しも可能です。
コンクリートブロックの倒壊問題は別の切り口で考えることにしましょう。
2.資金計画
・建物を補強して30年延長
安価な費用で建物の寿命を30年延ばすことが…、価値です。
工事金額の多くは、人件費です。
極力自分で材料調達して、半分の費用で補強工事を実施します。
規模と劣化程度によりますが、耐震工事そのものは、150万円程度で実施可能です。
補強に対する耐久性の尺度は、数値で示すことが可能です。
【耐久性の数値化】
木造住宅 リノベーションで家の寿命を延ばす【驚くほどの耐震性】
以上6つのポイントのうち、優先3つに絞って工事を実施します。
次の機会に、残りの項目を次の優先候補として実施するなど計画的に実施しましょう。
・30年相当の補強工事で同居も一考
同居の良いところがあります。
準備資金があれば、早期の実施が理想です。
将来的に、同居を検討されている場合は、相続問題も避けられません。
前もって住宅を購入するという考え方も良いと思います。
3.実際の工事
・依頼工事を限定する
自分で出来る工事と依頼工事とに分ける。
基礎の補強の(筋コンクリート基礎)・劣化部材の補修(劣化部材の交換)以外の工事区分は、
できるだけ自分でやりましょう。
工事上の注意点
・建築基準法により、10㎡以上の大規模改修の定義に該当すると、建築確認申請が必要となります。
大掛かりな模様替えに規模を拡大しないよう注意が必要です。
・現状確認の相談先
住宅の現状確認が、自分で判断できないときは建築事務所やインスペクターへ相談願います。
木材加工、基礎コンクリート及び屋根周りの工事は、施工業者へ依頼してください。
また、初動段階から安心して進めたい方は設計事務所へ相談してください。
まとめ
進め方
1.木造住宅の現状確認 2.資金計画 3.実際の工事 |
6つのポイント(確認と実際の工事個所)
1壁の補強・増設バランス補正 2接合部の補強 3基礎の補強 4水平構面の補強 5劣化部材の補修 6住宅の軽量化 |
1現状確認⇒補強ポイントを3つに絞る 2資金積み立て ⇒30年延長させるため 3実際の工事 ⇒基礎と木材加工は専業者 |
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