木造住宅を購入時の問題点
ローンが組めないケースとは
よくある質問
「購入するとき、ローンが組めない住宅があるようです。それはどんなときですか。」
このような質問にこたえます。
せっかく探した不動産でも、あとでローンが組めなかったり、再建築しようとしても不可能な場合があります。
後で後悔することがないように、注意が必要です。
一級建築設計士で35年仕事をしています。今回は、住宅ローンが組めない例。合わせて、再建築するときにどのような制限があるかについて解説します。
住宅ローンが組めない等の制限がある
規模の縮小を求められる場合は、融資の限度額が低く設定されます。
住宅ローンが組めない住宅や、再建築の際に、規模を縮小させられる例をあげました。
再建築不可
・敷地が道路に、2M以上接していない住宅 |
規模が縮小される(再建築の時)
・前面道路4M以下⇒【道路後退】
・すでに建ぺい率をオーバーしている ・すでに容積率をオーバーしている ・敷地上に都市計画道路の線引きがある |
再建築不可【敷地が2M以上接していない】
敷地は道路に2M以上接していなければ、再建築出来ません。
現在ほど、道路の整備に関心がなかったころ、前面道路の幅が狭くても家は建てられました。
その他伝統的な街並みの袋小路などでも、古い建物を見かけます。
このような場合では、建て替えることができない為、補強したり、劣化した部分補修などで維持しています。
前面道路4M以下⇒【道路後退】
建築基準法では、4Mの道路が確保されていることを求めています。
4M未満の道路では、道路中心線から2M後退した位置が、建築上の敷地面積として扱われます。
注意コメント
・すでに道路後退した位置を敷地境界線として設定している場合は問題ありません。
・道路後退前の敷地の場合、建物が干渉している場合は、部分カットが必要です。 ・直接建物の干渉がなくても、建ぺい率や容積率に影響します。(次に解説) |
道路後退の説明
関連資料
木造住宅 購入 注意が必要な知識 ローンヘも影響する【敷地面積】
すでに建ぺい率をオーバーしている
いわゆる、既存不適格と呼ばれる建物です。
高度成長時代、住宅が乱立した頃には木造住宅の完了検査が、制度的に確立されていませんでした。
特に、建売住宅では不動産業者は違反建築物を乱造販売した経過があります。
建ぺい率
建ぺい率=建築面積/敷地面積×100% (建ぺい率:30~80%の範囲) |
・用途地域ごとに30~80%の範囲
・用途地域の数は都市計画法で12種類
(平成30年4月田園住居地域追加)
図解
用語の説明
*建築面積
単純に地面に立っている水平投影面積
(真上から見た影部分)
屋根から庇が出ている場合や柱・壁があるかなど詳細のきまりがあります。
この点については、別記事で詳しく解説しました。
*敷地面積
道路負担を削除した、実有効敷地面積のこと
前面道路が4M以下の場合、道路中心線より2M後退したラインが、道路側の敷地境界線として扱われます。
後退し、切取られた見なし道路面積部分は、敷地面積から削除して計算する。(道路後退)
さらに詳しい建ぺい率
木造住宅 購入 注意が必要な知識 ローンヘも影響する【建ぺい率】
末尾【敷地面積】詳解案内
すでに容積率をオーバーしている
上記同様、既存不適格の建物です。
現在ほど、容積率として規制する概念はありませんでした。
乱造された背景については、上記の建ぺい率とほぼ同じ事情です。
かなり詳しい不動産業者の方でも、道路と容積率の関係は見落としがちです。
容積率
容積率=延べ床面積/敷地面積×100% (容積率:50~800%の範囲) |
・用途地域ごとに50~800%の範囲
・用途地域の数は都市計画法12種類
(平成30年4月田園住居地域追加)
・上限800%を超える緩和規定がある。
前面道路の幅が4.5M(12M以下)なので、用途地域ごとの容積率にならず、
以下 図示例)の計算方法となる。
図示例) 住居系の用途地域 (指定容積率200%) 掛けわせる定数 4/10 前面道路の幅 4.5M容積率(基準容積率と命名) 4.5M×4/10×100%=180% (道路制限により180%の、延べ床面積が上限) |
制限措置
幅員が12m未満の場合の制限
前面道路の幅員が12m未満の場合、用途地域の区分に従って容積率に上限が設けられます。
幅員12m未満の道路に面した土地に家を建てる場合、道路の幅に「4/10」または「6/10」を掛けた数値が容積率の上限です。
用途地域の区分と掛け合わせる数値は以下のようになります。
(1)第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域 4/10
(2)第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地 域、準住居地域 4/10
(3)その他 6/10
ただし、(2)(3)の区分には、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の判断を経て指定する区域での例外もあります。
図示例解説上記(1)(2)の住居系の用途地域で、指定容積率が200%の土地が幅4.5mの道路に面している場合、
基準容積率は「4.5m×40%=180%」です。
容積率は指定容積率・基準容積率のうち厳しい数値のものが適用されるため、
この土地に家を建てるには容積率180%以下でなくてはなりません。
幅員が4m未満の場合の制限
前面道路の幅員が4m未満の場合は、セットバック(道路の境界線から敷地を後退させること)が必要です。
セットバックした部分は道路とみなされ、実際の敷地面積から除かれます。
その分、敷地面積が狭くなるので、セットバックによって実質的に容積率が制限されます。
実際に購入する前に「既存不適格」に該当するかは確認してください。
前面道路の幅が狭い、該当する建物だけが、他の建物より大きく感じるなど。
何か不安を感じたときは、建築士や工務店などで詳しい人に確認することがおすすめです。
自分で確認できないとき
建築士などの専門家に相談してください |
さらに詳しい容積率
木造住宅 購入 注意が必要な知識 ローンヘも影響する【容積率】
末尾に【敷地面積】の詳しいリンク
敷地上に都市計画道路の線引き
木造2階建の場合、すでに都市計画道路の線引きにかかっていても、建築許可された建物が多く存在します。
都道府県別に予算化されて、実際に道路拡幅が開始されると、都市計画道路部分として干渉する建物の一部、
または全部を撤去する必要性が出てきます。
こういった場合は、建築計画に関連する所轄官庁で確認するか、建築士事務所を通じて確認してください。
都市計画道路の線引き確認
・所轄官庁で直接確認
・建築士などの専門家を通じて確認 |
都市計画法と建築基準法との関係【参考説明】
都市計画法と建築基準法、共有用語です。
それぞれ、別の法律ですが、切り離せません。
都市計画法では国土全体に対して計画的な指針を定めます。
それを受け、建築基準法による用途制限や容積率・建ぺい率などの制限が課されます。
都市計画法 国土全体の指針 |
⇓
建築基準法 個別に審査制限 |
都市計画法
『都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、事業その他都市計画に関し必要な事項を定め 都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。』 この法律が定める内容は、世の中の流れに即応し、変更される法律です。 |
建築基準法
『この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、 国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。』 建物単体について、詳細に確認していく作業を、この法律を通じて実施します。 |
まとめ
・ローンが組めないケース
・融資額を下げられるケース |
⇩
再建築不可
・敷地が道路に、2M以上接していない住宅 |
規模が縮小される(再建築の時)
・前面道路が4M以下⇒【道路後退】
・すでに建ぺい率をオーバーしている ・すでに容積率をオーバーしている ・敷地上に都市計画道路の線引きがある |
自分で確認できないとき
・建築士などの専門家に相談
・所轄官庁へ直接確認に行く(都市計画道路) |
合わせて【敷地面積】
木造住宅 購入 注意が必要な知識 ローンヘも影響する【敷地面積】